スポーツ障害

中日ドラゴンズチームドクター(元)の経験を生かして専門医として、現在は大相撲力士の治療に係わっております。即戦力でありつづけるための闘うスポーツ障害の治療です。

アキレス腱周囲炎

スポーツなどの繰り返しの負荷によってアキレス腱や腱周囲膜に炎症が起こり、アキレス腱痛として発症します。安静時の痛みはないことが多く、運動時の痛みが主な症状で、アキレス腱の踵骨(かかとの骨)付着部より2~5cm以内に痛みが生じ、周囲に熱感、腫脹が見られることもあります。治療は保存療法が基本で局所の安静を図り、アキレス腱への負荷を減らすために、ヒールの高い靴を履くことで疼痛が緩和されます。下腿三頭筋の筋力アップを図ることやストレッチなどが再
発予防に有効です。

オスグッド病

12~13歳のジャンプ動作の多いスポーツをする男子に多い疾患です。膝のお皿(膝蓋骨)から膝蓋腱がスネの骨につくところ脛骨結節に痛みが出ます。 レントゲン検査で脛骨粗面の膨隆や分節化を認めます。14~15歳の骨端軟骨板が閉鎖するまでの間 骨端軟骨は力学的に弱いため、この部分に負担がかかり、変形や痛みが出ます。基本的にはオーバーユースによる障害なので、スポーツを中止するか軽減します。骨端軟骨が消失して骨化する15歳頃には痛みは消失します。消炎鎮痛療法やオスグッドベルトという装具を用いて膝蓋腱を圧迫して脛骨結節にかかる負担を 軽減させてこの時期をしのぎます。上手にこの時期の治療ができなかったら 遺残性のオスグッド病となり 成人後手術が必要になることもあります

ジャンパー膝

膝蓋腱や大腿四頭筋腱の付着部の炎症です。膝のオーバーユースが原因になります。スポーツ選手に多いことから、この名前が付けられています。使いすぎ(overuse)による障害の治療は安静が基本です 中途半端なペースダウンや休息は慢性化してパフォーマンスを徐々に下げていき選手生命を短くします。消炎鎮痛療法と安静期間をとって完全に除痛を得てから、上手な復帰を目指すことが大切です

後十字靱帯損傷

多くの場合、バイク事故や車の事故やスポーツなどで膝を 90° に曲げた状態で、膝下の脛骨に前方から力が加わり生じます。後十字靱帯の脛骨付着部の剥離骨折を伴う場合は靱帯と骨片を元の位置へ引き寄せる手術がおこなわれることがありますが、多くの場合は装具や筋力増強訓練などのリハビリ治療を行います。

前十字靱帯損傷

スポーツなどでひねって前十字靱帯損傷が生じます。内側側副靱帯損傷と内側半月板損傷を合併すると予後が悪く、手術を要する可能性が高くなります。歩行時などに急にがくっと膝くずれ(膝折れ現象)をおこします。放置すると変形性膝関節症になることがあるので、若年者のスポーツ選手は、手術が勧められます。断裂部位を直接縫合しても、一度断裂した靭帯は、癒合しても本来の機能をはたせない事が多いので、断裂した靭帯は 切除して新たな靭帯から作り直す靱帯再建術が必要となります。中高年で、あまり スポーツをしない方は、装具や筋力増強訓練など保存的に治療します。

棚(たな)障害

思春期から青年期にまれに発症します。膝の関節包の内側に生まれつき約50%の人に滑膜ヒダが存在します。このヒダが膝蓋大腿関節にはさまって炎症をおこして痛みになります。階段で急に引っかかったり、膝の曲げ伸ばしで音が出てして痛みを生じます。膝蓋骨 内側に膝を伸ばしたときにしこりと圧痛を認めることもあります。軽症では消炎鎮痛療法と膝装具で改善します。症状が軽減しないときは関節鏡を用いて切除します

 

腸脛靭帯炎

腰椎の原因で起こる場合もあります

ここでは スポーツ障害について説明します膝の屈伸動作の多いスポーツ選手、特にランナーに多く、膝外側の大腿骨外顆と腸脛靭帯 が繰り返しの摩擦により痛みが出ます。 オーバーユースが原因です。O脚の人がなりやすい傾向にあります。消炎鎮痛療法と安静、クッション性のある靴を履くことも有効です、再発しやすい場合は 腰椎の検査をして 治療のアプローチを変えるのも有効です

半月板損傷

膝関節の内外側にある半月板が膝をひねって断裂することがあります。 10 ~ 30 歳の方ではスポーツで損傷することが多く、 40 歳以降では立ち座りの動作や階段などの軽微な外傷や加齢変化により自然に傷むこともあります。日本人に比較的多いのですが、生まれつき、外側の半月板が円盤状の半月板の場合は、学童期に自然に切れることもあります。膝の屈伸で痛み、関節が完全に伸びなくなったり、曲がらなくなることもあります。歩行で、「ガクッ」と膝が落ちてしまったり、膝が引っかかることもあります。理学的検査(マクマレーテスト等)で診断できますが、確定診断では超音波検査や MRI が有用です。治療は、まずは膝の安静と鎮痛剤の内服です。半月板損傷があると、大腿四頭 筋の廃用性萎縮が生じるので、大腿四頭筋などの筋力トレーニングが必要です。半月板の辺縁部は血行があるため再癒合が可能で関節鏡視下に縫合できます。特に若年者の場合、断裂が大きければ縫合します。断裂が小さい場合は自然治癒することもあります。半月板損傷を放置すると関節面の軟骨が変性して変形性膝関節症になることもあります若年者のスポーツ選手は、手術が勧められます。

膝蓋軟骨軟化症、膝蓋骨不安定症

13~16歳の女子に多く、症状は膝関節の鈍痛です。階段昇降や、長時間坐位で痛みが悪化します。膝蓋軟骨が軟化する疾患です。膝蓋骨脱臼や亜脱臼、膝蓋骨のずれるのが(膝蓋大腿関節の適合不良)が原因です 症状と理学的検査、レントゲン検査で診断できます。安静にして、消炎鎮痛療法や大腿四頭筋、とくに内側広筋を強化する筋トレや膝関節装具を処方します

分裂膝蓋骨

膝蓋骨が先天的に2つ以上に分裂したものです。原因は、成長過程における膝蓋骨の骨形 成の異常によると考えられています。頻度は約5%、9:1で男性に多く、両側例は約4割です。分裂のタイプは、膝蓋骨の外上方に分裂がある型がほとんどです。症状のない場合が多意。無症状の場合は治療の必要はありません。治療は、大腿四頭筋のストレッチング、筋力トレ、運動後のアイシングなどを行い、痛みの強い時は消炎鎮痛療法を行います 難治例には、手術もあります

野球肩

野球肩は投球動作をすることによって発生する痛みです。第二次成長の終焉する15~16歳が好発年齢です 投手と捕手に多いです。肩関節のみに起因するのではなく、投球動作は全身運動のため いずれかの故障が誘因となります 投球動作は、ワインドアップ期、コックアップ期、リリースと加速期、ボールが手から離れてからの減速期、フォロースルー期に分かれます。 どの動作の時に痛みが出るかによってある程度、病変部位が判ります。投球動作においては、150㌘弱のボールを静止している状態から数分の一秒という短い時間で時速100㌔㍍以上に加速しますので、その構成要素(腱板・関節唇・関節包複合体・上腕二頭筋長頭腱など)が損傷しやすいのです 成長期の小・中・高校生には障害予防の観点から、投球数制限がなされています。 診察の際には、理学所見として肩の関節可動域検査によって痛みが生じる位置を見極めるとともに、損傷した組織に対して人為的に刺激を加えることで症状を誘発するストレステストを行います。さらに、レントゲン撮影・エコー検査・CT・MRIなどの画像診断を併せて行うことを通してより正しい診断を下すことができます 全ての障害に共通するのは、原因がオーバーユースによるものであるため、投球動作の禁止(3から4週間)の後、リハビリテーションを行います。

野球肘

野球肘は、投球動作によって起こる肘の障害です。発育期の子どもは 体幹と下肢の筋力が弱いために 投球フォームは手投げの状態となり、肘に負担がかかりやすくなります 成人と比べて骨の端には成長に関わる脆弱な部分があります ここに投球による負担がかかります 肘の内側が痛む、曲げると痛い、伸ばすと痛い、投げた後、肘がだるい、練習中は大丈夫なのに、家に帰ると腕がだるい。投げる瞬間に肘の内側に痛みが走る。1つでも該当すれば、野球肘の可能性があります。野球肘の大部分の内側型は前腕屈筋群の使い過ぎにより、その起始部の繊維の微細な断裂と不完全な修復の反復によって発生します。発育期の子どもでは、起始部の成長軟骨の変形が起こり、投げ過ぎや投球フォームが悪いことで、肘内側疼痛が出ます。腱の牽引力により、骨の付着部に負担がかかり、障害が出ます。約3週間の投球禁止により、症状は軽快します。軽快しても再発を繰り返したり 痛いまま投球をしていると、靭帯損傷や、肘をかばうために肩に影響が出てしまいます。外側型は反復する肘外反ストレスにより、上腕骨小頭や 骨頭の関節軟骨やその下の骨に亀裂が生じ、最後には軟骨片がはく離し、関節内の遊離体(関節鼠)ができます。頻度は内側型と比べると少ないですが、長期間の投球動作の禁止が必要になります。関節鼠はプロ野球選手はoffの期間に手術を受けて鼠を除去します 鼠は関節の間にはさまり激痛や関節が動かなくなたりします 肘関節の外側の疼痛・圧痛・関節の可動域制限であり、筋肉の萎縮もあります。早期に発見され、症状の初期であれば、投球の禁止のみで自然治癒も可能ですが、再発を繰り返したり 放置して投球を続けると病巣が離れて遊離体となり、最終的には手術を要します 完全に野球肘を予防するためには 球数制限とノースロー日を作ることです。